成功事例

海外進出も! 徹底したブランディングが変えたもの

福島県飯坂町にある「フルーツの伊藤園」が作る高級干しぶどう。枝の付いためずらしい見た目とやわらかな食感で人気の商品だが、その成功にはブランディングが大きく関わっている。

おいしい干しぶどうで
安心・安全な福島を伝えたい

いまひとつ知名度が上がらない地元産のくだものを何とかしたいという思いを抱いていた福島の伊藤さん。

さまざまなくだものの産地としてはいつも二番手で、加えて、2011年の東日本大震災による原発事故で放射能汚染の風評被害もあり、農業生産者たちは憂き目に遭っていた。

「生のくだものではダメだ」と一念発起して、2013年、伊藤さんはオリジナルの干しぶどうづくりに乗り出した。

B品は使わず、高級品種の巨峰やシャインマスカットをわざわざ栽培して作る新商品で、福島の風評被害を払拭するとともに、地元生産品のアピールをしたいと考えていた。そんな時に出会ったのが、ファームステッド代表取締役・長岡淳一氏だった。

コンセプトを明確に伝える
トータルブランディング

北海道帯広市に本社を置くファームステッド株式会社は、パッケージデザインをはじめ、商品や企業、地域などのブランド化、販売戦略などのコンサルティングまでをこなす。

伊藤さんからの相談にファームステッドが提案したのは、「生産者である伊藤さんを世の中にデビューさせる」ということだった。

商品だけでなく、生産者を含めてひとつのブランドとして確立させることで、消費者に「伊藤さんの作る干しぶどうだからおいしい」と思わせるのが狙いだ。

フルーツファームいとう」というブランド名で作られる干しぶどうは、もともとが高品質な商品。そのため、食べるシーンも高級なものにしたかった。

ワインのおつまみとしてイメージしてもらえるように、展示会に立つ伊藤さんの服装までコーディネート。おしゃれで落ち着きのあるディスプレイのブースで、蝶ネクタイをつけたソムリエスタイルの伊藤さんが接客するなどした様子は、テレビの全国ニュースでも紹介された。

パッケージはそれまでのスタンドパックから箱入りに変更し、垢抜けたロゴと色使いで高級感を演出。海外にも通用するデザインだということで、シンガポールでテスト販売されるなど注目を集めた。

かつては手間がかかるわりに安価で販売していた干しぶどうも、今では2倍ほどの価格でもどんどん売れるようになったという。


展示会でテレビの取材を受ける伊藤さん。

 

6次産業化の成功は
自分を見つめ直すところから

いくら品質に自信があっても、数ある中に埋もれてしまっている商品は多い。

そこから抜け出すのに必要なのが“ブランディングの力”だ。6次産業化で多いのが、パッケージやホームページのデザインがバラバラだったり、ブランディングの方向性があいまいなため、売り先が定まらなかったり、「点」の状態で物事を進めてしまうこと。

販売する場所、生産量、ターゲットによってブランディングの仕方は変わるため、「自分はどこまでできるのか、何がしたいのか、目標を明確にしてプランを組み立てていくことが大事」と長岡氏は語ってくれた。


ファームステッド共同代表の長岡淳一氏(右)と阿部岳氏(左)。

 

DATA

株式会社フルーツのいとう園

住所:福島県福島市飯坂町東湯野字上岡14番地
TEL:024-563-5512
HP:株式会社ファームステッド

【本社】
北海道帯広市西6条南13丁目11-1F
TEL:0155-67-5821

【東京事務所】
住所:東京都中央区日本橋小伝馬町20-3-2F
TEL:03-6206-27


取材・文/児玉菜穂子

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