地域の人々に愛される! コラボ商品が成功する3つの秘訣とは?
2018/12/25
キウイフルーツの果肉を使ったデニッシュパン、イチゴ風味を感じるソフトクリーム。これらは、香川県が推奨する果物を活かしたスイーツだ。開発の立役者となったのは、JALと香川県、そしてJA香川県。三者がタッグを組んだ理由や、開発までのエピソードとは?
地域と企業の連携で
香川県産フルーツの認知度向上
香川県が推奨する果物「さぬき讃フルーツ」の対象は、現在全部で8品目15品種。香川県オリジナル品種のキウイフルーツ、みかん、イチゴなどがあるが、共通する特徴は、優れた甘みをもつこと。いずれも口に入れた瞬間、濃厚かつ上品な甘みをはっきりと感じる。県が認定した生産者によって栽培され、糖度など一定の品質基準を満たしたものだけがさぬき讃フルーツと呼ばれるため、味も品質も保証つきなのだ。
香川県果樹研究同志会のキウイ部会長であり、生産者の溝渕哲也さんは、さぬき讃フルーツのうちの一つ「さぬきゴールド」や、「さぬきエンジェルスイート」を手がけている。
美しい見た目のキウイフルーツに育てるため、香川県では全国的に珍しいキウイの袋がけ栽培を行っている。「手間暇がかかりますが、その分うまくできた時の喜びは大きいです。また、高く売れる商品を手がけているのだから、頑張ろうという気持ちになりますし、生産に携われることを誇らしく思います」と溝渕さん。
「香緑」は鮮やかで濃いグリーン色の果肉が特徴で、糖度は15度を超える。
このさぬき讃フルーツにJALが注目したのは、2016年のこと。同社で実施中の地域活性化を目的とした企画「JAL 新・JAPAN PROJECT」がきっかけだった。高松支店の統括マネージャーを務める川真田さんに、その内容や狙いを聞いた。「このプロジェクトは、『地域産業支援』と『観光振興』を2つの柱とする企画です。地域が抱える問題の分析や施策の提案を通し、物流の活性化と国内外からの交流人口の拡大を図ります。香川県のさぬき讃フルーツに焦点を当てたのは、優れた商品にも関わらず、他県の特産品に比べてPRされていないように見えたからです。さぬき讃フルーツの認知度やブランドイメージが向上する余地は、まだまだあると考えました」。
その後、JA香川県および香川県と連携してのプロジェクトがスタート。本プロジェクトの第一弾となったのが、冒頭で紹介した「香緑のデニッシュ」の開発・提供だ。「中途半端な商品では、ブランドイメージを傷つけてしまう可能性があるため、開発までには試行錯誤を繰り返し、やっとデニッシュという形にたどり着きました」。「香緑のデニッシュ」の開発に協力したメゾンカイザーは、フランスの伝統製法でパンを作る人気メーカーで、JALの古くからの取引先。メゾンカイザーとさぬき讃フルーツの”コラボ商品”ともいうべき「香緑のデニッシュ」について、香川県 県産品振興課の亀井さんはこう話す。
「高品質な食品への関心が高いメゾンカイザーファンの皆様に、さぬき讃フルーツを知っていただけたことは大きな成果です。また、高いブランドイメージを誇るメーカーとのコラボレーションによって、さぬき讃フルーツのブランドイメージの向上にも繋がったと思います。メゾンカイザーさんのような魅力的な企業との連携が実現したのは、JALさんをはじめとする関係者の皆様のご尽力があってこそ。JA香川県と香川県だけでは、実現できなかったと思います」。
高いポテンシャルをもつ特産品を手がけるJA香川県と香川県。魅力的な取引先や有望な販路をもつJAL。地域と企業が手を組んだことで、お互いの”資源”が最大限に生かされたようだ。
コラボで生産物の価値上昇
反響が生産者の励みに
今回のコラボレーションに伴う反響も、すでにあったという。JA香川県・営農部の久保さんは、次のように語る。
「機内誌をはじめとする様々な媒体で取り上げられた後、生産者のもとにも県内外から、”『香緑のデニッシュ』と『さぬき讃フルーツ』の情報が載っていたよ”といった声が届いたようです。生産者は、最高品質を保つため一般的なフルーツに比べ数倍の時間と手間をかけて生産しています。丹精込めて作ったフルーツが広く知られ、反響がもらえることは、大きな喜びにつながります。また、メゾンカイザーで販売しているパンに国内のフルーツを使用するのは今回が初めてと聞きました。〝史上初〞の企画に関われたことを、誇りに感じている生産者は多いでしょう」。
「香緑のデニッシュ」の販売終了後もプロジェクトは続いており、今夏は第二弾として、さぬき讃フルーツのイチゴ「さぬきひめ」を使ったソフトクリームの開発・提供が行われた。しかし、川真田さんによると、プロジェクトはまだまだ発展途中なのだそう。「世界でも広く、さぬき讃フルーツやそのほかの特産品が知られることを目標にしています。最終的には、国内外問わず、多くの方々に買い求めていただけるようにしたいですね」。
生産者、地域、企業が連携し、それぞれの強みを活かして製品化することで、生産物のブランド力が高まり価値が上昇していく。生産物の魅力を活かす方策を幅広いジャンルの関係者と共に試行錯誤することは、6次産業化の取組において重要といえるだろう。
(左)香川県交流推進部 県産品振興課 亀井裕美子さん
(左中央)JA香川県 営農部 販売促進課 課長 久保明彦さん
(右中央)日本航空株式会社 高松支店 統括マネージャー 川真田純也さん
(左)香川県農政水産部 農業生産流通課 安田英樹さん