戦略不足で陥りやすい、6次産業化の落とし穴とは?
2018/02/06
専門家ならではの鋭い視点で、生産者を導いてくれ る6次産業化プランナー。数ある案件に携わってき た人気プランナーたちのこぼれ話をご紹介。第1回 は、よくある失敗例について。
case.1 ビジョンがないままに商品を作ってしまう
「商品を作ったんですが、どうやって売ったらいいですか?」。こういう相談、実はとても多いんです。6次産業化には、ビジネスモデルが必須です。ビジョンがないままに商品を作ってから相談をされても、プランナーも頭を抱えてしまいます。生産者が6次産業化で商品を作る場合、「原材料の良さを一番活かせるのは、どういう商品なんだろう?」というところから考えていく必要があります。それには、ある程度の市場調査が必要です。戦略なき商品化は、「在庫と借金だけ残る」という残念な結果を引き起こしかねません。
case.2 無謀な東京進出を思い描く
「東京の百貨店で売りたいんです」というのも、とても多い相談の1つです。例を挙げましょう。「何を売りますか?」と聞くと「トマトジュースです」と答えます。 東京には全国から商品が集まるため、トマトジュースも数え切れないほど種類があります。それらと何が違うのでしょうか?と聞くと、「いえ、普通のトマトジュースです」と返ってくる。case.1と同じく、戦略がないんです。市場の特性を踏まえ、どういう差別化ができるのかを突き詰めた上で、販路を開拓していきましょう。
case.3 生産量と納品量を過大に見積もってしまう
小中規模の農業法人が6次産業化をする場合、原材料の生産量には限りがあります。そこで気をつけないといけないのは、大手企業と取引する場合です。大手スーパーなどは、安定供給が命です。最大収穫量を見込んで取引をすると、天候 などで収穫量が落ち込んだ場合、穴をあけることになってしまいます。チラシなどで告知していた場合は、スーパーの信頼にも関わる大問題です。ほかの生産者との連携で供給量を確保するなどの工夫をして、確実に供給できる量で交渉するようにしましょう。
case.4 必要な設備投資ができない
どんな設備が必要なのかも、戦略を立てる際に検証する必要があります。例え ば、野菜を粉にして売る場合、金属探知機が必要です。その際、比較的安価な金 属探知機を購入するケースが多いのですが、食品加工所や大手取引先では、高 性能の金属探知機を導入していることがほとんどです。取引先の基準がクリアできず、全部返されてしまう場合があるんです。販売対象先をイメージしながら商品化するときに、どの規模の設備・機械を整えるのかしっかり考え、実行可能な中で販売先を選ぶということが必要です。
取材協力
村上一幸 さん
1958年生まれ。中小企業診断士(一般社団法人農業経営支援センター所属)。農業経営上級アドバイザー、食の6次産業化プロデューサー(レベル5)、食農連携コーディネーター(FACO)、GAP指導員など。
ロクジカチャンネル vol.19 2017 AUTUMN より転載